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現実と仮想の狭間で。レビュー:映画『Revolver』(リボルバー)。

投稿日 2008/11/15閲覧数 17,541 viewsコメント数 One Comment add to hatena (3) add to del.icio.us (0) add to livedoor.clip (0) add to Yahoo!Bookmark (0)
現実と仮想の狭間で。レビュー:映画『Revolver』(リボルバー)。

ガイ・リッチー監督作品。

『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』や『スナッチ』など、疾走感に溢れるクライム・ムービーで一世を風靡した感があるが、元妻のマドンナを起用した『スウェプト・アウェイ』は酷評。久々のクライム・ムービーと言うことで期待して観た。

が、ハッキリ言って、既存のガイ・リッチー作品を期待する人にはオススメできない内容。
かと言って駄作かと言うと、そんなことは全く無い。

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罠にはめられ投獄された凄腕ギャンブラーのジェイクは、獄中でギャンブルの究極のテクニックを会得。出所後、カジノ王・マカから大金を巻き上げて恨みを晴らす。逆上したマカはヒットマンを雇い、ジェイクを抹殺するように命令するが、ザックとアヴィの二人組によってジェイクは救われる。二人は彼を匿うことを条件に、全財産を渡すことを要求。さらに、血液の病気で余命が3日であることを宣告するのだった…。

爽快感とは無縁の、禅問答的映画。

物語は、ある意味、破綻をきたしているし、監督自身も「わけがわからない映画かもね。ははは。」という感じ。何も考えず流されたい時に観るべき映画ではないが、デヴィッド・リンチなどが好きで、それなりに映画を色々観ている人にはオススメできる。一方で、物語の裏を読んで、考え、何らか想像を働かせることに楽しみを見出せる人でなければ、ワケワカラン映画になりかねない。

「自分意外の絶対的な存在」というものを意識したことはあるだろうか。
「自分が世界を動かし支配している」という妄想に駆られたことはあるだろうか。
本作のテーマは、まさにそこにある。

現実と仮想(脳内)が入れ替わり立ち代わりする映画だ。「リボルバー」というタイトルの意味はそこにある。
重要なのは「これが現実なのか?仮想なのか?」と、事細かに分析することではない。そこに象徴されている何かを思いながら感じることだ。

チェスとペテンが、理性と騙しの象徴的な存在として映される。

以下、観た人向けに。

  • 【説1】全ては、ジェイクの別人格と妄想の2人が仕組んだペテン。
    ジェイクは、復讐を遂げるために自分をペテンにはめる必要があった、ということ。最大のペテンとは、ジェイク自身が「ゴールド(絶対的な存在)」であると、自分自身に信じ込ませたこと。自ら死地に赴くようなことをしたのも、それを信じきれたからこそできたこと。妄想で理性を殺さなければ、できなかった。

    理性を働かせた状態では、復讐できない。相手を自滅させることが、最大の復讐であり、最大のペテン。自分は弱い存在だと思わせ、最後に逆転する。

    そのための自我対決だった。自分で自分を操る不思議。

  • 【説2】全ては、ジェイクの獄中での妄想。
    この物語自体が、獄中でのジェイクの現実逃避の妄想。※ が、これはあまりに短絡的に過ぎるし、面白みもない。個人的には【説1】として、ごちゃごちゃ考えるのが性に合っている。

結局、人はどこかで「絶対的な存在=ゴールド」を求めている。実在するのかしないのか、わからなくても。
存在の有無に意味は無い。存在は身体でなく、精神で定義されるものだ。

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ジェイクはエレベーター内で、自分の自我と対決し、精神で肉体を乗り越えた。
乗り越えさせられた、と言うべきかもしれない。「これは自分の脳内のフィクションなんだ。すべては自分の思い通りになるはずだ。」という妄想を信じこまされたとも言える。それが別人格の最大のペテン。

そして、畏れず、ただ淡々と、他の人には理解できない行動をとる。

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理解できない存在を前にして、人は自分の経験や知識で(つまり、理性で)判断を下そうとする。しかし、理性では判断できない。異常を正常で定義しようとすること自体が無理な話だ。そして、理性は説明づけのために、「ゴールド」を登場させる。存在すら怪しい絶対的な存在を。「彼はゴールドなんだ。だから、平気なんだ。」という説明づけ。そして、自ら破滅する。復讐は完遂される。

生物(人間も)の存在意義は、所詮、遺伝子を運ぶ乗物であること以外の何物でもない。
この映画を観て、そんなことを考えた。

トータルの完成度では、イマイチな出来だったけれど、ガイ・リッチーの新境地を期待させる内容だった。

次作がどうなるか。次の一歩が楽しみでもあるし、怖くもある。

映画『Revolver』(リボルバー) オフィシャルサイト

映画『Revolver』(リボルバー)DVD

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    One Comment »

    • jai

      はじめまして。

      最近になってようやくレンタルでREVOLVERを観て、
      一体他の人達はこの映画をどういう解釈で観たんだろうと検索してたら
      こちらにたどり着きました。

      なるほど。納得です。
      自分の脳を疑うこと程恐ろしいことはないです。
      疑ってしまった時点で、この世界から自分というものは存在しなくなってしまいます。
      相手の脳をコントロールする。いわゆる洗脳もまた然り。

      ジェイクは自分で自分を洗脳できたというコトになるんでしょうか。

      深いテーマだったんですね。
      やっべ。もう一回観直そう。(笑)

      安易すぎるほど、

      ジェイクは2人に作り上げられたブレーンって意味?

      ヒットマンの役割は結局のところ何だったのか?(好きなキャラですが)

      観たまま騙される(作り手の思惑通りに観てしまうワタシ…)質なので、
      最後にユージュアルサスペクツ的などんでん返しがあるのか?

      実はジェイクの兄貴がゴールドだったりして?

      なんて所にまで行き着いてしまった訳です。ワタシ、バカ!

      でもそういう意味では、かなり楽しめました。(笑)

      ガイ・リッチーの展開の早いカメラワークはやっぱり
      引き込まれますね。

      ワタシも次の作品が楽しみです。

      長々長文失礼致しました。

      では。

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